心 ―ハジマリノウタ―




廊下は静まり返り、蝋燭の光だけが、

妖しく床を照らし出す。


部屋を出た。


もう、戻ることはない。


この廊下も、

きっともう歩くことはないのか。


ジグが俺たちを裏切っている。


確信を得た今でも、

信じられないという気持ちが在る。


思えば、俺を迎えに来てくれたのは、

ジグだった。


あの頃から既に、

ロックが中央を任されていたが、

忙しくて、能力者集めに

回るほどの時間がなかったのだ。


南西アジトで師匠についていた俺を

狭い路地や町で戦うには最適だと

抜擢したジグは、俺を連れて

中央アジトへ戻った。


南西アジトより小さいこのアジトを

まるで探検でもするように

毎日毎日駆け回ったっけ。


来てすぐにロックが好きになったし、

アジトも秘密基地みたいで気に入った。


だが、何よりもこの町に来て、

俺に衝撃を与えたのは、

ドレイ工場だった。


厳しい門の奥に見える、

暗雲に突き刺さるように聳え立った塔。


何か不吉な声が聞こえるわけでも、

音が響くわけでもない。


ただ、そこは得体の知れない恐怖に

満ち溢れているように…

当時の俺には見えたのだ。