心 ―ハジマリノウタ―




次に目を開けたとき、

既に時計の針は21時を示していた。


俺はノロノロとベッドから這い上がり、

そのまま洗面所へ向かった。


頭がぼんやりして、ハッキリしない。


けれど、夢を見たような気がする。


ユアが居た。


暗闇の中で、独り鮮やかな光を放って

彼女だけが鮮明に見えた。


けれど、彼女は泣いていて、

苦しげに、俺に…


俺は頭を振った。


ダメだ、思い出せない。


ユアは、今あの夢のように

苦しんで、泣き続けているのだろうか?


ならば、俺たちが救わなければ。


鏡の中の俺が力強く頷いて、

姿を消した。


俺は壁にかけてある戦闘用の黒いコートを

手にとって、袖を通す。


これを着ると、意識が高まって、

集中力が増す。


フウと息を吐いてから、

少し早いが、俺はトランクを持ち上げ、

玄関へと向かった。