心 ―ハジマリノウタ―






「私は、心亡き者です」




女の人の美しい隻眼が

きらりと光った気がした。


人々がざわつき始める。


そう、私には心が無い。


記憶があるときから、

私の中に感情は無い。


喜び。憎しみ。哀しみ。慈しみ。


そんなものは、私の中には存在しない。


私の中に響くのは、

今も、これまでも、

そしてこれからも、


虚しさだけ。




「心亡き者…。

初めて会ったよ」



ロックと呼ばれた男は頷き、

老人は、再び主に問う。




「心亡き者、か…。

まあ、よい。それで、リオ。

お前は、この者をどうするつもりなのだ?」




老人がざわめきの中で静かに主を見つめる。


辺りは波を打ったように静まる。