心 ―ハジマリノウタ―




私は治療室を後にした。


私が救ったはずなのに、

何故か救われたような気分だった。


後は…

私がすることは、

リオとメイを見つけ出すこと。


ただそれだけだ。


その時、一瞬薄暗い廊下の蝋燭が揺らいだ。


風も無く、誰かが側を通り過ぎたわけでもない。


刹那、目の前に現れたのは…




「やあ、久しぶりだね、お姫様?」



カールした漆黒の髪、白い肌、

煌いた紅い瞳…


何時か現れた

ハートを持つ者だ。


名は確か…




「おっと、俺のこと、忘れちゃった?

まぁ、自己紹介もまだだったしね、

俺の名前は、フェイク。

よろしくね、ユアちゃん?」




フェイク。


彼は何故、私の名を知っているのだろう?


フェイクは、ニコニコと笑みを浮かべ、

私に歩み寄る。


長い襟足を、後ろで一つにまとめた髪型は、

まるでリオのようで。


私は、逃げなかった。


敵だと分かっていても、

今は先に進まなくてはならない。


例え、手がかりが無くても、

今は、ただできることをすればいいのだ。