心 ―ハジマリノウタ―






老人は満足そうに頷くと、

建物の中に主を招きいれた。


そして、先程とは

打って変わったしっかりとした

厳しい声で主に声をかけた。


まるで戦場を生きる戦士のよう。


灰色の瞳は世に狼狽した老人のものではなく、

強い気を放っていた。




「随分と遅かったな。それから…」




細められた目が私に向けられた。


すると、主は私を庇うようにその視線を遮った。





「後で説明する。

兎に角中へ。

追っ手が来るかもしれない」




建物の中は、外の夜風を遮り暖かかった。


天井からはシャンデリアが下がり、

そのロウソクは柔らかな光を降り注いでいる。


壁際には棚の上に花瓶があり、

壁の薄汚れたピンクに

白い花が華やかさを加えていた。


その後ろには、階段が続いており、

先は闇に沈んでいた。