心 ―ハジマリノウタ―




そのままドレイの前を通り過ぎると、

普段は堅く閉まっている

小さなドアが開いていた。


主は先にそのドアから出ると、

辺りをうかがった。


そして、私に手で合図する。




「これから夜の街に出ます。

何を言われても、立ち止まらないで。

離れないでください」




私は頷く。


主は私の腕を自分の腕に絡ませると、

歩き始めた。


夜の街はがやがやと賑わっていた。


狭い道に溢れるような人。


そして、眩しいほどの光。


飛び交う罵声に甲高い悲鳴、

絶え間なく続く会話、誰かの笑い声。


私はただ前を見つめ、歩いた。


人並みを縫って歩いていく。


私の格好は目立たなかった。


私以外の女は同じような格好か

もっと派手な格好をしていたから。


けれど、主の姿は目立った。


彼のような格好をしている男は一人もいなかった。


皆擦り切れたシャツにズボンで、

女を追い掛け回すばかり。


声をかけられることも少なくなかったけれど、


主の命令だから。