心 ―ハジマリノウタ―





私の答えを聞くと、

主となった男は窓のほうへ寄って、

手招きした。


窓から見える景色はもう闇に沈み、

奴隷工場から発せられる光のみが

曇り空を照らしていた。


主は近づいてきた私を

腕でしっかり抱き上げると、

窓の縁に軽々と着地した。


そして、頭上で囁いた。




「しっかり捕まっていてくださいね」




男は私を抱えたまま、窓から飛び降りた。


耳元で風がびゅうびゅう鳴りたてる。


落下していく感覚と、その音が私を包む。


地面が近づいてきた。


すると、シューというような何かが

抜ける音が聞こえ、

私と主様は無事着陸した。


地面に私を降ろした主は、

いたずらっぽく私に笑いかけた。


その微笑みは、

何処か今まで見てきた笑みとは

違う気がした。


が、何処が違うのか、

私にはよく分からなかった。




「大丈夫でしたか?」




私が無言で頷くと、

彼はついてくるように手で合図した。