心 ―ハジマリノウタ―





男は更に困惑を深くしたようで、

私を黒い瞳でじっと見つめた。


私は、命令を待つようにじっと見つめ返した。


すると、きまり悪そうに

視線をそらした男は、

紅く染めた頬を隠すように

主を見下ろした。




「あなたは、ここから逃げたいのですか?」



「御心のままに」




奴隷とはそういうものだから。


私の意志など、関係無い。


奴隷とは、そういうものでしょう?


私の答えを聞くと、

男は何かを決心したように深く頷き、

顔を上げた。




「では、今から少しの間だけ、

あなたの主となりましょう。

共に逃げてくれますか?」




私は再び繰り返した。




「御心のままに」