心 ―ハジマリノウタ―





「アンタ、あのドレスはどうする?」




リヴィアが私に尋ねた。


あのドレス、というのは、

私が工場から抜け出してきたときに

来ていた青いドレスだろう。


私は首を振った。


もう着ることはないだろう。




「必要ありません。

置いて行きます」




すると、リヴィアは

驚いたように目を丸くして頷いた。


私は、リヴィアがタンスから

物を移すのをしばらく見ていた。




「リヴィアさん。

あの本は持っていかないのですか?」



「ああ、持って行くよ。

だけど、全部は無理だから

一番下の段だけだね」




ガラス戸の中の本を指差した私に、

リヴィアが答えた。


私は、その棚に歩いていって、

ガラスの戸をそっとあけた。




「そうですか。

では、この本を詰めてもいいですか?」