心 ―ハジマリノウタ―





「そこに置いて行き給え。

もう下がって良い。

ご苦労だったな」




「は。

仰せのままに、主様」




見張り番は深くお辞儀をすると、

私を部屋へ招き入れる代わりに

背を強く押した。


バランスを崩し、

部屋の黒い床に倒れこむ。


と、視界がふと翳った。




「可哀相に。

何時もこんな扱いを受けているのかね?」




白い肌に細い目。


その目は細められている。


笑っているのだ、主様は。


優しい声音、

優しい言葉。


しかし、主は私を助け起こそうとはしなかった。


私が何も答えずに、

ただ座り込んでいると、

主はあのねっとりとした声で、

立て。

と命令する。


主の命令は絶対。


私はそっと立ち上がった。