時は現代。
舞台は日本。
物語はどんな時でも突然始まる。

キキーッ!!
タイヤとアスファルトが擦れる嫌なおと。
人が…訂正。
人の形をした生き物が空中を舞う。
嗚呼…命の危機が訪れた時、時の流れがスローモーションになるのは本当のことだったのか…。
長年生きている「銀」…この物語の主人公だ。は宙を舞いながら考える。
彼は長年生きているだけあって命の危機には何度も出会っている。
その度こんな事を考えている彼は結構余裕があるのかもしれない。
体がふわり。
景色が逆さまに…。
べしゃ。
と言う音とともに地面に叩きつけられる。
先ほどの盛大なブレーキ音により野次馬達がすでにわらわら。
ほとんどの人間が携帯電話を片手に今、目の前で繰り広げられている事件を嬉しそうに話したりしている。
ひどいヤツは写真まで撮っている。
「見せ物じゃねぇんだよ。」
心の中で悪態を吐く。
運転席の人間は今の時代には珍しく慌てて車から降りてくる。
「大丈夫ですか!!?」
ぎろりと睨みつける。
一瞬ビクっとした人間だが
「今、救急車呼びます!」
携帯電話の番号をプッシュする。
その様子を見て慌てて起き上がる銀。
救急車なんか呼ばれたら人間の病院に連れて行かれてしまう。
現代科学はナメられる物ではない。
ここまでくればもうお察しだろう。
銀…彼は人間ではない。