「隣、空いてますか？」


満席の新幹線。

ある女性があたしに話しかけてきた。

「空いてますよ。」

あたしはニッコリ笑って返事をした。


女性が２０代前半で髪の毛を巻いていてお嬢様っぽくしていた。


「ありがとう。」

女性は微笑んで席に座った。


少し沈黙が続いたが、彼女の方から話しかけてきた。


「高校生だよね？
１人旅？」

「はい。前に住んでた所に行くんです。」


あたしは出来るだけ相手に好感を持ってもらえるように愛想良く話した。

「そうなの。あたしも１人旅なんだぁ。でも新幹線の中で三時間もヒマでしょ？だから、一緒に話さない？」


彼女は見た目も品があるが、育ちもいいのか話し方にも品があった。


「いいですねぇ。」
あたしも１人で３時間も時間を潰すには無理があった。

「よかったぁ。
あたし、中山リサコ。22歳、大学生。あなたは？」

「あたしは村井サユリ。16歳の高校１年生です。」

リサコさんに合わせて、自分も落ち着いたトーンを意識した。


「まだ１年生なの？大人っぽいわねぇ。」


リサコさんは口に手を添えて笑った。