母が亡くなったため、僕は忌引として二日学校を休んだ。僕としては母が亡くなったことをあまり公言してもらいたくはなかったのだが、学校という場所は必然的に休んだ理由を述べる上、母が亡くなるというのは世間体からしても重大なことらしく、翌日にはクラスメート全員がそのことを知っていた。

翌日学校に行くと、クラスメート諸君はやたらと僕を気遣っている様子で、なにやらぎくしゃくとしていた。少し気遣ってもらうくらいならば大いにけっこうなのだが、彼らが必要以上に僕を見えない敵(?)から守ろうするため、逆にこちらが疲れてしまう結果になった。

しかしそんな中、翔だけはいつも通りに僕と接してくれた。きっと翔自身がそんな僕の心境を見抜いて……、いや、そんなことはあり得ない。翔はどちらかというと無神経で、あまり人のことを考えないタイプの人間なのだ。そこが彼の短所であるのだが、この時の僕にとってはその短所が幸いした。

「大地、今日も行こうぜ」

「一体どこに行くっていうんだい?」

僕は翔の突然の発言に戸惑った。

「例の心霊スポットに決まってるだろう。お前がいない間、一緒に行く奴がいなくて寂しかったんだ」

翔は頭をかきながら、自らの発言に照れるようにして言った。