しょうがい

「何でそんな話になるんだよ」

「いや、前から気になってたんだよ。何で彼女いないのかなってさ。大地は別に顔が悪いわけでもないし、性格だって普通だろう」

性格が普通だというのに喜ぶべきなのかは分からないが、とりあえず僕は彼に微笑んだ。

「それは嬉しいね。でも僕に彼女はいないし、これから出来る予定もないね」

「ふーん、そうか。なんなら紹介してやろうか」

「ありがたいけど、遠慮しておくよ」

僕は丁重にお断りした。

実を言うと、僕が彼女がいないのに大した理由はないのである。昔、女性関係で嫌なことがあったわけではない。ただ一つ理由を言うなれば、それは感性の問題であった。

僕はいわゆる古い感性を持った人間であり、女性に対する考え方だって古かった。だから僕は最近の人々の恋愛感の理解に苦しみ、なかなかその中に入っていくことが出来ずにいたのである。いちいちメールでやり取りするのもややこしいし、彼女のために何かプレゼントをするのも嫌だった。結局のところ、僕は面倒臭がりな人間なのだ。

さっき翔も言ってたことだが、僕は意外と整った顔立ちで、女性にモテないといえば嘘になる。事実、僕はこれまでに二回、告白されようとしたことがある。だが、僕はそういう雰囲気をいち早く察知し、上手く話をごまかしながら、全てを投げ出すようにして逃げだしてきたのだ。だから僕は「好きです」という一言を、今まで一度も直に聞いたことはない。