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三桁は下らないだろうテディベア達が並ぶ部屋で、中崎壮馬は針と糸を操る。

糸切りバサミがちょきんと鳴った時、その対面に座る牧田小百合が微笑んだ。

「あ、ちゃんと直ったんですね」

と、壮馬がテーブルに座らせたベアの頭を撫でる。

白い、包帯に全身をくるまれた、片目のテディベアだった。

「当然だろ。うちは裁縫部だからな」

壮馬は針を片付け始める。

小百合はベアを膝に乗せた。

視線は手元。

「レナちゃんのこと、ありがとう」

「ん? ああ」

「彼女……なんでも自分ひとりでできるって思ってるから。――ううん、本当になんでもできるんだけど、でも、ひとりじゃできないこともあるでしょ」

「まあな」

「それに、傷のこと、私にはバレてないつもりなんだもん。だからほっとけなかったんですよ」

「言われなくてもわかってる。それで俺を介したんだろ。お前だって裁縫部のくせにな。幽霊部員?」

「あら、壮馬くんの裁縫技術を見込んでですよ。幼馴染みを信頼してる私を疑うんですか?」

一ノ瀬レナや賀川ほたるの前では見せない、いたずら猫のような笑みだった。