「私、せっかく、不器用になって……自分で、上手くやれてると思ったのに……」

人に迷惑をかけず。

自分だけの力で。

なんでもうまく。

なんでもやれて。

その、勘違いだった。

壮馬が、私の手を両手で包み込む。そしてそっと、カッターを取り上げた。

「テディベアは痛みを知らない。たとえ耳が片方なくとも、たとえ目が片方なくとも、たとえ腕が片方なくとも、テディベアは痛みを知らない。だからお前の代わりに傷を負ってもくれる」

「……」

「だからさ、その分お前な、笑ってみろよ。俺が、裁縫部が、心の傷を縫合して、痛みを拭ってやるから」

それから私は、ひとしきり泣いた。

笑うのではなく泣いた。

手首を傷つけた時、ボウッとしていた分を取り返すように。

『不器用』で抑えていた自分を解き放つように。

今まであしらってきたほたるへ謝るように。

ひとしきり泣いた。

テディベアは痛みを知らない。

黒いボタンの瞳は、そんな私をじっと見つめていた。