テディベアは痛みを知らない

一瞬、目を瞑っていた。だけど、右手はたしかに、綿の溢れ出てしまったベアを掴んでいた。

おそるおそる、瞼を開く。

壮馬のハサミは、私の人差し指と中指の間を通り、クマの肩を掠めていた。

「……ふん」

コっ、と、テーブルに刺さった裁ちバサミを、壮馬が抜く。

その隙に、私はテディベアを胸へ掻き抱いた。

テーブルはハサミの突き立った痕だらけで……それ以上に、ベアはボロボロだった。綿や包帯が、血か涙のようにハラハラと落ちていく。

それを見ていられなくて、私は床にしゃがみ込んだ。

「……なんで、こんなこと、するのよ……」

そう、問わずにいられない。

このクマは、アンタが作ったんでしょ。

アンタのクマなんだ。

アンタがこの子に体をあげて。

世界を教えたんだ。

なのになんで、こんなことするの。

壮馬はハサミを裁縫箱にしまった。冷たい声が降ってくる。

「俺がそのクマをズタズタにして、そのクマがズタズタにされて、だれかに迷惑がかかったか?」

「っ――」

それは、たしかに、そうだけど……私も、たった今そう言ったけど……