テディベアは痛みを知らない

壮馬が頷く。それは了承じゃなく、ただ傾聴の動きだ。

森山がその傍らで溜め息をついていた。けれど、私はこの『不自由』をやめるつもりはない。

ほたるが言った。そんなことやめろって。まだ小百合はこのことを知らないけど、もし話したら、彼女も同じことを言うだろう。

けれど私はやめない。

不自由を得るために、およそ五センチの狂気と仲を持つ。

壮馬が立ち上がった。その右手がテーブルの端に置いてある裁縫箱をいじる。

掴んだのは裁ちバサミだった。

「だれにも迷惑をかけてない、か」

壮馬の右手がハサミを逆さに持つ。左手が、包帯巻きのベアを仰向けにして、テーブルに抑えつけた。

「ちょっと、なにする気?」

訊ねた直後、壮馬は右手を振り落とした。

テーブルに重い衝撃、鈍い音。

テディベアのお腹が、見事に串刺しにされていた。