テディベアは痛みを知らない

「もっとも」

と、そんな私の驚きなど無視して、中崎壮馬は言う。

「この活動はあくまで表面上。俺達にはほかにやることがある」

「やること?」

「そう。だれかの心の傷を縫合してやること。つまり、今は、お前だ」

壮馬がベアをテーブルに乗せる。

黒いボタンの片目だけを包帯の隙間から除かせるベアと、その創造主とが、一緒になって私を見つめた。

「一ノ瀬、お前、やんでるだろ。だから自分を傷つける。だからお前の傷を理解してない」

それは、昨日森山が言ったのと、同じもの。

「リスカなんてよせ。傷はな、お前を愛しちゃくれない。痛みは、お前を幸せにしない。偽りと仮面の快楽だ。自傷なんてやめろ」

「なんで……」

思わず、私は自分のリストバンドを握っていた。

まだ治りきってない傷が、布と擦れて泣いていた。

「なんで、アンタにそんなこと言われないといけないの? 私はこれでうまくやってるの。よくも知らないで、そんな簡単にやめろとか言わないで」

「……じゃあ、まだ続けんのか?」

「そうよ。私には必要だもの。それに、誰にも迷惑なんかかけてないでしょ」

「……そうか」