テディベアは痛みを知らない

「いらっしゃい、一ノ瀬レナ」

と、あいさつしてくる。

昨日とは違う、まだ社交的な口調だ。低い声だから、妙ななまめかしささえある。

「昨日は悪かったな。コイツの完成に専念しちまって、お客のお前をないがしろにした」

「お客……?」

わけのわからない代名詞だ。

彼の言い方からして『来訪者』じゃなく『商売相手』というニュアンスしか伝わってこない。

森山が私を部屋の中へ押し入れ、壮馬の向かいに座らせた。

部屋のドアが閉められる。

森山が言った。

「僕らはね、裁縫部なんだ」

「裁縫……? ああだから」

こんなに部屋中、テディベアだらけなのか。

そういえば、ここのテディベアはみんな手作りとか森山が言っていた。

「まあ、レナちゃんが予想してる通り、主にぬいぐるみなんかを作ったりするのがうちだよ。ちなみにこちらにおわすのが現部長、中崎壮馬くんです」

……ということは、あそこのかわいいクマも、あっちのファンシーなクマも、和風なクマもおしゃれなクマも、みんなこの黒からすみたいな男が作ったと?

昨日、彼がクマの背中を縫っているのを見はしたものの、そう宣言されると驚きだった。