テディベアは痛みを知らない

「アンタさ、やめなよ、それ。あたしゃ知ってるよ、ソレの下がどんなンなってるか」

「ほっといて。私はこれくらいでちょうどいいの」

「なにがちょうどいいんだよ?」

「わかんないかな。ほたるはさ、もし空手で最強になったらどうする? 誰も彼も敵わないくらい強くなったらどうする? 自分にハンデをつけない? おもりを背負ったり、片手を使わなかったり……私はそれと同じだよ」

ほたるはなにも言わない。それが頭の中で想像してるのか、それとも私の言葉に呆れているのかは知らない。

私は、成績は優秀なほうで通してる。少なくとも、上から数えたほうが確実に早いくらいの位置にいる。

取ろうと思えばトップになれる。だけど、私はトップにならない、なれない、なりたくない。

私の手首の『不自由』は、ちょうどよく私の能力を低下劣化させてくれる。

クラスメイトに頼られても満足なノートはない。

一ノ瀬レナは、完璧じゃない、ミスもある人間だと認識させられる。

だから私は、教室にいると、自分の『不自由』さを痛感し、快楽する。

なんて心地いいんだろう、無能って。

だれかさんにノートを開いて教えている小百合の背中を見ながら、私は劣等感を楽しんでいた。