テディベアは痛みを知らない

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お風呂に入る時は、さすがにリストバンドを外す。

そうなると、私が今まで自分に刻みつけてきた『不自由』の痕跡がすべてあらわになる。

横、横、斜め、横、斜め横、横。

まるで、肌色の包帯を巻いているような筋模様が、私の右手首に刻まれている。

今私に不自由を与えてくれているのは、その模様の上から五番目くらいの位置にある傷だ。

お湯の中へ浸すと、ずきりと痛む。痛んで、それからボウッとする。

ああそういえば、自殺とかの方法に、手首を切って湯船に浸しておくとかあったっけ。

でも、血液の粘り気や凝固作用、あと傷口の塞がるほうが強くて、失血死じゃなくただの貧血で終わるような気がする。

試したりはしない。私は死にたいわけじゃないのだから。

静かに湯船に浸かっていると、右手首の脈動を感じられた。

とくん、とくん、生きている。とくん、とくん、動いている。

脈拍百回、深呼吸を十回、瞑想を一回、そして失神未遂を半秒味わって、目を開く。

「痛みくらい、知ってるわ」

独り言は、静かすぎる浴室には思ったよりも響く。

ぴちゃん。

天井から集まっていた水滴が、落下した――。