「出会ったときのことって覚えてる?」


「覚えてるよ。」


「嘘だぁ。」


「いや、微妙だけど。」


「…何それ。」


「嘘だよ、嘘!
全部覚えてるって、俺記憶力良いっつったろ?」


「…ホントかなぁ?」


「ホントだよ。
見るからに負のオーラ全開の女でさぁ、おまけに口を開けばすげぇムカつくこと言うし?」


「そうそう、あたしムカついてたね、あの時。」


「それが一年経ったらこんなんなってんだもんなぁ。」


「…どういう意味よ。」


思わず肩をすくめると、



「俺、お前に相当惚れてるよ?」









毎日は、他愛もなく過ぎていく。


辛く悲しい朝もあれば、こうやって口説かれる夜もある。


笑いあって、キスして、大事なものを大事だと思えることこそが、きっと大切なのだろう。


ジルが居て、あたしが居る。


それだけのことが幸せなのだ。


これからふたり、欠けたものをゆっくり埋めよう。