水の都だけあって、歩いて行ける範囲は限られている。


ゼンに連れられて辿り着いたのは、船が出入りする港。


サンの船が来航した場所とはまた違った、小さな港だった。



…そういえば。


私とゼンが出逢ったのも、港町だった。


"ラー"に追われていた私を、ゼンが助けてくれたっけ。



しつこくお願いして…サンに逢うために、ゼンの船に乗せてもらった。


あの日から、まだ半年も経ってないなんて…


「……ララ」


不意に名前を呼ばれ、私は肩を跳ねさせる。


ゼンに名前を呼ばれることがあまりないから…何かくすぐったい。


「何?ゼン」


「…サンに、何言われたの」


「え…」


何…って。

いろいろありすぎて、何を言ったらいいのかわからない。


「えーっと…」


ほんの数十分前の会話が、頭の中をぐるぐると廻る。


サンの過去から話すべき?


そこはゼンが直接訊きたいかな。じゃあ…