瞬時に子供たちの拍手喝さいが疲労で疲れ切った俺の体を優しく包み込んだ。


やっぱ、数か月ぶりにプログラムを演じるのはキツイ。


止めどなく溢れてくる汗を腕で拭い、駆け付けた子から手渡されたタオルと水が入ったペットボトルを受け取った。


渇いたのどを潤して、顔色一つ変えないコーチへ寄る。


「どうでしたか?」


シーズン中ではないとはいえ、良い演技とはいえない。


怒号と溢れんばかりのダメ出しが飛び出すものだと思っていたら、コーチはサングラスを取り不気味に口角を釣り上げた。


あれ? この顔どこかで見たような……。


「今日から四回転の練習だ。わかったな、タク」


本田コーチ。


実はこの人が世界ジュニアチャンピオンを育て上げた名コーチであり、全米選手権優勝経験がある実力者であることを知るのは、翌日先生のお見舞いに行った時に判明するのであった。