氷の女王に愛の手を


一回、二回、三回……半。


エッジが氷に着いた瞬間バランスを乱したが、急いでフリーレッグを突いて体制を立て直す。


ツーフット(両足着氷)になって着氷が乱れたが、なんとか転倒は免れた。


試合とはまた違った緊張感が体を支配する感覚に戸惑うが、そんな悠長なことを言ってられない。


皆の前で恥をかくことだけは勘弁だ。


リンクの対辺に向かって音楽に合わせてステップを踏み、ターンをして左足インサイドエッジで踏み切る。


3F。エッジエラーはない完ぺきなジャンプ。


コーチに目配せするが、顔色一つ変えずに俺の演技を黙々と凝視している。


少しくらい反応を示してくれたっていいのに、無関心な人だな。


ジャンプを全て終えて次の要素、足換えスピンに入る。


スピンには大きく三種類の基本姿勢があり、上半身を水平に保つキャメルスピン(CSp)