「これから試合だってのに『タクちゃんの目が覚めるまでずっといる!』って言って聞かなかったんだよ。
おかげであちらのコーチに睨まれるし『もし優勝できなかったら、あなたの教え子のせいです!』なんて脅してくるし。


誰かさんのせいで俺は肩身の狭い思いをしたんだ。もしあの子が優勝しなかったらどうしてくれるんだよ!?」


ぎゃ、逆切れですか?


そんなやり取りがあったなんて知らなかった。気を失っていた俺が知る由もないのだけれど。


アメリカ大会には美優のライバルになりそうな選手がいないから、普通に演技をまとめれば優勝は間違いないだろう。


いや、でも、もし俺のせいで美優が冷静を欠いて満足のいく演技ができなかったら……。


「俺は全世界の美優ファンに恨まれる……?」


ご愁傷様。


コーチは不敵に笑みを浮かべてポツリと口にした。


頭の傷が、妙に疼いた。