五割という成功率は、極端に低い数字だと考えていい。


「四回転は回避した方がよさそうだな」


リンクサイドに戻って開口一番に飛び出したコーチの言葉。


確かに跳べない四回転を跳ぶより確実な三回転で点を稼いだ方が得策だろう。


だがそれではトリプルアクセルを一つしか予定していないプログラム構成では、他の選手と比べて技術点が低くなってしまう。


ましてこのアメリカ大会では強豪が揃いにそろっている。


フランスの世界選手権金メダリスト、ブレイアン選手。


アメリカの国内チャンピオン、ライン選手。


同じくアメリカのグランプリファイナル銅メダリスト、ジョナー選手。


他にも国際大会で表彰台に上がった経験のある選手が、このアメリカ大会に参戦している。


今期は五位入賞へ。という目標を掲げていただけに、四回転の未完成は痛手だ。


「ひとまず明日のショートに向けて四回転は忘れろ。まずは鬼門のトリプルアクセルを決めるのが先決だ」