氷の女王に愛の手を


いくら平日の昼過ぎで客が少ないとはいえ、大声で捲し立てたら注目を浴びるのは必須。


客も店員も迷惑そうにこちらに視線を送っている。


確かにちょっと楽しんでたのは認めるが、ここまで怒られる義理はない。


勝気・強気・短期の三拍子揃ったチビ助なら大きなお世話と言われるだろうと想像していたが、まさかTPOも弁えずに激怒されるとは驚きだ。


別に年下のチビ助になにを言われようが気にならないが、こう人前で恥を晒されたんだ。


ちょっとは逆襲しておかないとね。


「じゃあ聞くけど、お前一人でミューを誘えた?」


「え、それは……」


「女とまともに喋れることさえ出来ないくせに、意気がってんじゃねーよガキが。相手は世界選手権覇者のミューだぞ? 世間から過度の期待をされて、常に結果を求められる存在。
練習漬けの毎日で、離れて暮らすミューと会える機会なんざ主要大会かこの合宿ぐらいしかないんだ。限られたチャンスを生かさなきゃ落とせない上玉なんだよ。分かってんのかお前は!」


ちょっと反論したらこの通り。


先ほどまでの勢いはどこへやら。俯いて落ち込んでやがる。