文学乙女

実際見ると、温厚そうで感じのいい人だった。





京都と奈良を旅して、昨日帰ってきたばかりだと言っている。






少し会話をした後、あたしは東雲の間を離れて、二階のベランダにいる。





知らない大人達に囲まれてるから、今落ち着ける場所はここしかない。





ポケットにウォークマンを忍ばせ、今、こっそり音楽を聴いている。





夜の景色を眺めながら、自分の世界に浸っていると、三枝さんが隣にやって来た。





「何聴いてるんですか?」





三枝さんはペットボトルのお茶を差し出しながら聞いてくる。





「いないから探しましたよ」




「すみません。……ちょっと場違いかなと思って」





あたしはお茶を受け取り、キャップを開けて一口飲む。





「夜は涼しいですね」





「ええ」





あたしはうなずいた。





後ろから聞こえるにぎやかな声と逆に、ベランダは静かだった。





三枝さんは手すりに寄りかかって、ぼんやりと夜景を眺めている。