ドアが開くと同時に聞こえてきたのは、イッペー君の声。


はぁはぁと息を切らしながら、あたしの席に向かう。


「あれ? サクラ?」


教科書やノートは机の上に広げてある。

それなのにあたしの姿がないから、不思議に思ったのか、キョロキョロしてる。

しまいには、机の下や中まで覗いてる。


ドラえもんじゃあるまいし。

そんなとこにいるわけないじゃん。

やっぱイッペー君て時々、おバカ。



「先生、あたし、ここだよ」


教室の隅っこから声をかけると、イッペー君は肩をビクンとさせて振り返った。


「うわあ! びびった! そんなとこにおったんか! お前、気配消すの上手いなぁ……。忍者?」


笑えない冗談を言いながら近づいてくる。