それでもイッペー君の低い声に神経を刺激されて、

それだけで泣きそうになったりもした。


そんな時はイッペー君が黒板に文字を書いている時だけ、そっと顔を上げて背中を見つめた。


カツカツ……ってチョークの音が響く。


「うわっ。折れたし」


またチョーク折ってる。


「イッペー君! 筆圧強すぎ!」


木村君のツッコミにクラス中が笑った。


「うるさいわっ」


クルリと振り返ったイッペー君は、木村君に向けてチョークを投げた。


チョークは木村君の頭に命中。


「うわっ。当たった」


自分で投げておきながら、イッペー君はじっと自分の指を見つめて驚いている。