菊池君はあたしの横を通り過ぎて、もと来た道を戻っていく。


あたしはしばらくその場から動けなかった。


菊池君の真剣さに圧倒された。


ジン……って

ずっと掴まれていた手首と…それから胸が痛む。



菊池君に言われなくても、きっとすぐに返事はできなかった。


「ごめん」だとか「好きな人がいる」だとか

例えそんな言葉を用意していたとしても

簡単になんて言えなかった。


だって、まっすぐに見据える瞳をあたしは知ってる。

あれはあたし自身だ。


菊池君が……まるであたしに見えた。



ねぇ。

イッペー君もこんな気持ちだったの?