明日は、グラディス王女の16回目の誕生パーティーの日です。

ティアラを模したデザインの、妖精の涙が輝く指輪に、真珠を幾重にも連ねたネックレス。ふんわりしたクリーム色の細やかなレースをふんだんに使ったドレス。

いつもなら胸が弾んでわくわくして、待ち遠しいパーティーなのですが、グラディス王女のご機嫌は最悪でした。

イライラと、広い部屋を歩き回っています。


グラディス王女の機嫌を損ねている理由は二つ。
一つは、山向こうの国ビーワ国の王子との婚約が正式に決まり、パーティーで発表される事。
もう一つは、城下町から王宮の中まで、みんなが噂している魔術使いパメラの新しい弟子の事。


イヤよ、イヤ。
ビーワ国になんて行きたくないわ。山しかない無骨なな国に行くよりも、
私はずっとこの美しい国にいたいのに。

それに、私は騎士団のユリウスが好きなのに……。

ユリウスの端正な横顔を思い出して、グラディス王女はああ、と溜め息をつきました。

彼は私の気持ちなんて、きっと分かってはいないわね。