「国王様、失礼致します。魔術使いパメラ様が、長い旅から戻られましてございます。謁見室にて、お待ちでございます」


国王の側近が、耳元で小さく囁きました。
はて困った。
王女をこのまま放っておいたらもっとへそを曲げてしまうでしょう。

側近が、もう一言言い添えました。国王の顔がぱっと明るくなります。


「グラディスや、お前は南にあるココアという領地を知っているね?」


「田舎でしょ。それが何よ」


「ココアの領主が、一足早くお前の誕生プレゼントを持って来たそうだよ。あの幻の妖精の涙だそうだ」


がばっとグラディス王女が起き上がりました。キラキラとした瞳で父王を見ます。


「妖精の涙? お伽話にでてくるあれかしら。すごいわ、本当にあるのね」


国王は機嫌のよくなった王女を急かすように言いました。


「妖精の涙と言ったら、誰も持ってない稀な宝石だぞ。グラディスだけだ」


グラディスだけ。
なんていい響きなんでしょう。
さっきまでのふくれっ面はどこにいったのか、グラディス王女はベッドから飛び降りると、鏡台の前に座って化粧を整え始めました。