今日も王宮の奥深くにあるグラディス王女の部屋で、怒鳴り声が響いています。

どうやら困ったような国王の声も聞こえます。


「かわいいグラディスや、何をそんなにふくれているのだね?」


少し恰幅のいい国王は、ベッドに潜り込んで顔を見せようとしない王女に優しく問いかけました。


「騎士団のユリウスに、私の散歩に付き合うようにって言ったら断られたの!
信じられないわ。この私のお願いを断るなんて!」


王女はベッドの中からヒステリックな声をあげました。

ユリウスか。
国王は仕事熱心な騎士団長の顔を思い浮かべて顔をしかめました。
彼ならば、王女の思いつきよりも職務を優先するでしょう。
しかし騎士団たるもの、それくらい真面目に働いてもらわないと困ります。


「そうだ。では、わしと庭を歩かないかい?
それとも離宮の池に船を浮かべて遊ぶかね?」


船遊びは、先月まで王女が大喜びしていた遊びでしたが、王女はイヤ! と大きな声で言いました。

さて困ったな。どうやったら機嫌が直るものやら。国王はこんもりと盛り上がったベッドを見て、そっと溜め息をつきました。