グラディス王女の部屋に近付くにつれ、腐臭が段々激しくなってきました。


「ふん、酷くなってるな」


リュアネスは少し顔をしかめながらも、部屋へと続く扉を開きました。


「ひっ!」


一歩踏み入れたレオノーラは、悲鳴を上げて後ずさりました。
王女の部屋は、毒蛇と毒蜘蛛で溢れていたのです。


「レオノーラ、下がってな」


パメラが杖を振るうと、埋め尽くすように蠢いていた蛇や蜘蛛が姿を消しました。


『……誰? 出て行って。私に近寄らないでちょうだい』


部屋の奥のベッドの中から、嗄れた低い声がしました。


「ああ、グラディスや。パメラが高名な魔術使い様を連れて来たのだよ。
魔術使い様が、お前のその哀れな呪いを解いてくれるそうだよ」


国王がそう言うと、天蓋のカーテンの隙間から枯れ木のような腕が出て、手招きしました。


『本当に……? 嬉しい。
では、魔術使い様? さあ、私を助けて下さいませ』


「王女、あんた妖精の涙を持ってるだろう? まずはそれを出してくれ」


室内に入ったリュアネスが言うと、ベッドの中から憎らしげな声がしました。