お話の始まりは決まって、むかしむかし、あるところに。

このお話も、その言葉で始めてみましょう。


むかしむかし、あるところに貧しい花売りの娘がおりました。

娘の名前は、レオノーラ。
日に焼けた赤茶けた髪に、小麦色の肌。血色のいい頬にはそばかすが浮いています。

毎日野山を巡り珍しい花々を摘んでまわる生活のせいか、身のこなしは軽く、細くしなやかな体は若い鹿のよう。


まだ14歳、子供らしさの残るレオノーラの瞳は、多くの少女達がそうであるように夢見がちに煌めいていました。