身代わり姫

『王子、あの魔術使いを殺しな。魔術使いよ、お前はこの王子に刃を向けられるかい?』


トン、と悪魔が王子の肩を蹴って宙を舞うと、王子が何事か唸りながら、リュアネスに襲いかかりました。


「あんたは眠ってな」


リュアネスが杖をひとふりすると、空中からロープが現れました。
ロープは王子に向かってぐるりと絡みつこうとしました。


「ジャマダ!」


王子が、まとわりつくロープを切り払おうと剣を振りかざした瞬間に、リュアネスは胸元から小さな玉を出して投げつけました。

玉はぽんっと破裂し、黄色い煙が王子を包み込んだかと思うと、王子はぐんにゃりとその場に倒れ込みました。


「パメラに礼を言わなきゃな。なかなかこの煙玉は役に立つ」


眠りこけた王子の手から剣を取り、リュアネスはふふんと笑って胸元から小さな袋をだしました。
あの朝パメラが渡した、小さな袋です。

リュアネスは、剣の切っ先を苦々しい顔をした悪魔に向けて、自信ありげに言いました。


「オレをカエルにした恨みはでかいぞ! 高みの見物は止めろ。相手にしてやるから、こいよ」


『ふん。たかが人間の魔術使いが、何を偉そうに。カエルのまま地べたを這っておればよいものを』


悪魔の指先から鋭い光が放たれました。
リュアネスの足元をじゅっと焦がします。