王子が、松明を薪の中に放り投げました。


ぼっと火が上がり、その熱風でレオノーラのドレスが舞い上がりました。
レオノーラの悲鳴が広場に響き渡りました。


その時です。


「レオノーラ!!」


リュイの叫び声がしたかと思うと、炎の中に何かが放り込まれました。

ぷしゅうう、と紫色の煙が溢れ出し、広場に広がります。


「何だ!? 衛兵っ、誰かいるぞっ」


至る所から聞こえる人々の悲鳴の中に、ナマタ王子の叫び声が聞こえました。


「……。熱くない、わ」


レオノーラは足元を優しく撫でる、紫色に変わった炎を見下ろしながら言いました。


きょろきょろと、周りを見渡します。

さっきの声はリュイだわ。きっとリュイが助けに来てくれたんだ!


見渡しても紫色の煙に覆われていて、遠くに人々の悲鳴や、王子が衛兵を怒鳴る声ばかりが聞こえます。


「衛兵! 早くこの事態を収めい!
乱入者は即座に切り捨てよ!」


王子の怒声がしました。


「リュイ、リュイ。危ないわ、来てはダメよ!!」


レオノーラは力の限りに叫びました。