そんな素晴らしい花嫁をもらったナマタ王子でしたが、彼の心は冷え切っておりました。

あんなに酷い噂のあったグラディス王女とは、丸きり別人ではないか。おかしいぞ、何かあるに違いない。


怪しいと思うことは色々ありました。

グラディス王女は大変な浪費家で、ドレスや宝石が大好きという話でしたが、そんな素振りはありません。
ドレスは地味な色合いを好んでいるようですし、宝石もまったく身につけません。

ダンスが得意だと聞いていたのに、婚礼パーティーの夜のダンスは、お世辞にも上手いとはいえませんでした。

何より怪しいのが、乳母であるシエラの態度です。
一度、シエラに叱られて、小さくなっているグラディス王女を見かけたのです。王子に気付くと慌てて取り繕っていましたが、乳母が王女にあんな物言いをするでしょうか。


そして、疑わしいのはもう一つ。
ナマタ王子は、グラディス王女との距離を少し離れて保ち、夜は共に眠ることもしませんでした。

プライドの高いという噂のグラディス王女ならば、馬鹿にしていると怒りそうなものですが、
自分のそばにやってくるグラディス王女は、むしろそれを喜んでいる節がありました。


あの王女、きっと何かある。

自室にいたナマタ王子は、離宮の方を見ながら、冷めた笑いを浮かべました。