目の前のグラディス王女は、まだ緊張がほぐれてはいないものの、チグリの花を見る目は優しい光を持っています。


ふむ、しばらく様子を見てやろう。
しかし、父王が言ったように、確かに美しい女だな。瞳には変な煌めきがあるし、それにこの香り。
この香りは一体何だろうか……。

考え込んでいたナマタ王子は、自分を見上げるグラディス王女の視線に気づき、曖昧に笑みを浮かべました。

これは気をつけていないと、騙されるともしれんな。


そんな本心を隠しつつ、ナマタ王子は笑みを張り付けたまま、庭や王宮を案内しました。




そして、そんな二人の様子を、シエラが物陰から冷たい眼差しで見つめていました。