「あなた様はよく独り言を言っているようですけれど、お止めなさいませ。グラディス王女は気が触れていると噂されてしまいます」


「はい、分かりました」

シエラは、後でナマタ王子がお出ましになるので、それまで礼儀作法の復習をなさいませ、と言って部屋を出ていきました。
最後に、ボロを出せば殺されますよ、と釘をさすのを忘れませんでした。



「ねえ、レオノーラ。逃げようよ……」


胸元からリュイの切なそうな声がしましたが、レオノーラは黙って首を振り、礼儀作法の分厚い本を手に取りました。