「授業態度も、まあ、まじめですし、友達も多い。まだまだ伸びるでしょう。この夏休みに、もうひとつランクを上げて、県立湘洋を目指すということで…」

佐伯は、1人で勝手に決めているらしい。

そりゃあ、あたしも、進路調査表に、湘洋って、書いたんだけど…。

でも、本当にそこに行きたい訳じゃない。

ううん。

どこの高校に入ったって、おんなじ。

目的が、見えない。

どうしてみんな、子どもの頃から、自分の将来を決めちゃえるんだろう。

分厚い眼鏡をかけて、幼稚園から受験する子どもの気がしれない。

ランク付けなんて、しょせん、手続き上の都合じゃない。

そうしたほうが、簡単だから、集合でくくってしまうんだ。

はみだした『わるいこ』は、管理しにくいから、みんなが後ろ指をさすんだ。

そんな言葉が、喉の奥にひっかかっているけれど、出てこない。

言えないことが多すぎて、伝えられないことがありすぎて、イライラする。

「ということで、逆瀬川、夏休み、がんばれよ。おまえなら大丈夫だと信じてるぞ」

佐伯は、あたしの資料をトントンと机でそろえた。

「まあ。まいちゃん、よかったわねぇ。先生、ありがとうございます。これからも、まいを宜しくお願いいたします」

おばちゃんは、にこにこ顔だ。

あたしは、席を立ち、佐伯に頭をさげた。