「キャンデーおごっちゃるからさぁー」

「いくらのぉ?」

「ごじゅーえん」

真紀ったら、ドけちぃー。

「あたしさぁ。ケンタのオレンジシャーベットのがいいなぁ…」

「ああ。わーかったよぉっ」

えへっ。もーけた。

「ちょっとまっててぇ」

真紀にそう言うと、傍らに転がってるのり子の足を蹴っとばした。

のり子は、ちょっとシンナー臭い。

流し台の下に、C瓶、隠してあんの、知ってるんだ。

真紀たちの『赤華』や『紫天使』は、シンナー禁止だけど、のり子はべつに正式なメンバーってわけじゃないから、1日の半分は、ラリってる。

これで、真紀の知り合いじゃなかったら、街を回ってる立ち番に、シメられてるよ。

しょーがないヤツ。

「のーりこ。あたし、真紀と出かけてくるからぁ」

「んー」

「わかったぁー?」

「うーん。いってらっしゃぁ…ぃ」

半分、寝ぼけたまま、左手を振った。