「なんたって、俺、原チャリ初めて転がしたの、12の時だもん」

「なぁんだぁー」

みんな、最初は無免なんだぁ…。

ふりおだなぁ…。

「朽木なんてもっとひどいぜ。あいつ、9つで原チャリ盗んで、走り出したまでは良かったが、チビだったから、止まった時に地面に足がつかなかった。そのままゴロゴロ転がって、あわやダンプの下敷き…」

「あっぶなぁい」

「そ。アブナイ奴だよ、あいつは。だいたい、死ぬコト、怖がってねーもん」

死ぬコト…。

「緒方くんは?」

「俺? 俺は、どうかなぁ? お袋、1人残して死ねないよなぁ…」

ああ…。

「オトーサン、いないの?」

「嫁サン放りだして、蒸発。イイ根性してるよ」

「そっか。あたしのママも、若い男と逃げたんだって」

「へー。カワイソウなキョーグーじゃん」

ちょっと、茶化したように緒方くんは言った。

「緒方くんのが、カワイソウだよ」

あたしも、あっけらかんと言う。

深刻になったら、辛すぎるから。

「はっは。かんけーねーよなぁ。大人の事情なんて」

「うん。いえてる」

2人で、笑った。