そうだよね。あたしは、ずっと『いいこ』だったもの。疲れて帰ってくるパパに、心配かけちゃいけないと思って、何でも1人でやってきたし、口答えもしなかった。

だって、あたしの居る場所は、ここしかないから。

誰も抱きしめてくれなくても、ここが、あたしの家だから。

落ちつける場所だったから。

「あたし、1人でアパートかりる」

パパの顔が、みるみる硬直した。

「ばかなことを言うんじゃないっ! 子供のくせに!」

「パパだって…」

あたしは、唇を噛んだ。

「おまえはまだ、中学生なんだぞ! 1人で何が出来るって言うんだ!?」

「できるもん」

ああ。言葉を、おさえきれない…。

「あたし、何だって出来るもん。パパが毎日遅く帰ってきても、1人でちゃんとやってきたじゃない! 掃除だって、洗濯だって、お料理だって。みんな、1人でやってるのに、どうして、ママなんかっ!?」

「それと、家を出るのと、どんな関係があるんだ!!」

「あたし、新しいママなんていらないっ!」

「何を言ってるんだ。さっき、いいと言ったじゃないか」

「パパが奥さんをもらうなら、勝手にしろって言ったのよ。でも、あたしには関係ない。あたしとその人は、他人だもん」