今夜に限って、パパは早く帰って来た。

ノー残業デーでもないのに、8時に帰宅するなんて、何年ぶりかな?

きっと、再婚の話を、おばちゃんに頼んだものの、あたしの反応が気になったに違いない。

パパは、ご機嫌取りに買ってきたケーキをあたしに勧めながら、やんわりと切りだした。

「新しい、お母さんのことだがなぁ、まい」

あたしは、用意していた答えを、さらりと口にする。

「いいよ」

でも、心の中は、そんな物わかりのいい返事とは裏腹に、何だか訳のわからない、どろどろした感情が渦巻いていて、言葉にさえならなかった。

パパは、そんなあたしの気持ちになんかおかまいなし。

「そ、そうか? なぁんだ、まいも、ママが欲しかったのか…。いやぁ、そうかぁ…」

もう、舞い上がっちゃって、みっともないくらいのニヤニヤ笑い。

どうして?

パパは、あたしのことなんて、どうだっていいの?

あたしがどんな気持ちでいるかぐらい、判ってよ。

「パパ」

「な、なんだ?」

ニコニコ顔のパパ。