「そーだよね…。親友だもんね…」

「なに、とぼけたことゆってんの? うわっ! あと2分!」

えーこは、一心不乱にノートを写しまくる。

3時間目の鐘が鳴るまでに、えーこは3回シャープの芯を折って、いらいらしながら訳を写し終えた。

あたし、逆瀬川まい(さかせがわ まい)は、中学3年生。平々凡々の、とりたてて特技も趣味もない女の子。

だって、趣味と胸を張って公言できるほど、何かに一生懸命になったこともないし、他人より何かが抜きんでているわけでもない。

友達はたくさんいるし、成績も中くらいだけど、ただ、それだけ。

それが、あたしのすべて。

よく、あたしから○○を取ったら何が残るの? なんて言うけど、あたしからは取るものすら、ない。

それでも、毎日、確実に時間はすぎていって、14才のあたしは、どんどん過去に置き去りにされていく。

何もしないまま、何も感じないまま、何も成せないまま、大人に近づいてゆく。

あたしは、まだ、何もしてません。

あたしは、まだ、何も見てません。

あたしは、まだ、何も判ってません。

あたしは、まだ、何も考えてません。

あたしは、まだ…。