14才の地図

いつのまにか、気分が晴れていた。

そう、真紀ちゃんは、何も聞かなかった。

おしつけがましくなぐさめたりも、しなかった。

ただ、あたしを笑わせてくれただけ。

あたしは、同情なんかいらない。

不幸な家庭の、可愛そうな少女、なんて思われるのはサイアク。

そういうあたしの気持ちを、真紀ちゃんは判ってくれてるのかもしれない。

心の痛みが、判る人なのかもしれない。

ますます、真紀ちゃんが好きになった。

真紀ちゃんのためなら、なんでも出来るような、不思議な気持ちさえしてきた。

真紀ちゃんは、あたしのヒーローなんだ。

本気で、そんなことを、考えた。



シャ───。

ホースから、水が弧を描いて飛ぶ。

白いぶかぶかズボンと、黒いランニング・シャツ。

頭から、水をかぶってる。

ふわふわの髪が、水をはじいていた。

「朽木(くつぎ)ぃ───!」

真紀ちゃんが、叫んだ。